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■少年時代
私の小さかった頃は家に庭があり、たくさんの植物や動物を飼っていました。休みの日には父親が山や海にもよく連れて行ってくれて、山では昆虫を捕り、海ではカニやヤドカリを捕ってきては家に持って帰ってきてよく飼育したものです。自然の生きものたちはどうしてこんな形や色をしているんだろう?とその頃から動植物にはとても興味がありましたね。そんな環境の中で育ったこともあって私は自然と動植物が好きになりました。
職人の家に生まれてきた事で、小さい頃から生きものの絵を描いたり、仕事場のガラクタを使って何か作ったりする事は得意な方だったのですが、その分勉強の方は苦手でしたね。通信簿も成績が良いのは図画工作だけでした。 |
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■職人になるきっかけ

<父と私> |
私が職人になることを決めた一番のきっかけはお爺さんが亡くなった事でした。その頃の私は家の仕事を継ぐ事は考えてなく、広告やポスターなどを作るデザイナーになりたかったのです。グラフィックデザインの専門学校を卒業したのち会社に勤めていた私は、パソコンを使い図形などを描く仕事をしていました。
5年程した頃、寝たきりになっていたお爺さんが亡くなってしまったのですが、その時に思ったのです、今私がやっている仕事は星の数ほどいる仕事だけど、代々引継いできている家の仕事は数少ない貴重な仕事なのでは?と思ったのでした。ひいお爺さんの代から続いているウチの仕事は父親の代で三代目になります、お爺さんが亡くなり、やがて父親もこの仕事を辞めてしまったら、錺職として続いてきているウチの仕事が途絶えてしまうと感じ始めたのでした。
そんな出来事がきっかけで私も錺職人(かざりしょくにん)の四代目として家の仕事を引継いで行こうと決心したのでした。 |
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■職人になってから現在

<作品> |
いよいよ家で修行をはじめる事になったのですが、簪の事はまだ何も分かりません。そこでいきなり家で仕事を覚える前に、簪がどうやって売れていくのか、どんな人が簪を使うのか、まずそういう事を勉強した方がいいのではと思い、古くからおつき合いのある髪飾りを扱う会社へ入れさせてもらい、家で作った品物がどうやって使う人の手に渡っていくのか、そう言った世の中の仕組みを学びました。
そして会社に通いながら少しづつ家の仕事も手伝うようになりました。はじめは葉っぱひとつ切るのも思うように手が動きませんでした。小さい頃から父親の仕事は見てきてたのですが、いざやってみるととても難しく、何度も指を切ったりしました。ひとつひとつの道具を使いこなす難しさを思い知らされました。そして何度の失敗を繰り返し、私が仕事をはじめてからもうすぐ10年が経とうとしています。
職人に100%というのは無いと思うのですが、自分で納得できる品物が出来るようになったのは本当に最近の事です。うまく出来上がった時の満足感は何とも言えないですね。 |
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■職人哲学
私はこの墨田区伝統工芸保存会の中では一番年下です。職人としてベテランの方々から比べるとまだまだはしくれです。ですが自分の仕事には誇りを持ってやっています。私が職人としてのスタートは遅かったのですが、それまでに経験してきた事は何ひとつ無駄にはなっていないと感じています。
小さな頃から動植物が好きで良く観察していた事、専門学校で習った絵の勉強、パソコンで図形を描いていた仕事、髪飾り会社で教わった簪の流通面。これらの経験が全て今の仕事に結びついている事であり、その経験を自分なりに応用して無駄にしない事が大切なんだと思います。
そして一番大切な事は人とのふれあいだと思います。家族はもちろんの事、職人仲間、友人、簪を求めて下さるお客さま、こう言った自分の身の回りの人達に支えられて、今の自分があることを毎日の仕事を通してつくづく感じています。 |
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■私の目標・夢
これからの私の目標は、まず一番にもっともっと職人として腕をあげていく事です。普段は日本舞踊や演劇用の特殊な簪を作っていますが、一般の人達が着けられるような簪や小物類もたくさん作りたいと思ってます。簪に使われる図柄は日本独特の柄や模様が使われています。それを自分なりにアレンジして、洋服にも着けられるような飾り物を作っていくつもりです。

<蝶のブローチ> |
そして今まで身に付けてきた技術を生かし、金属を使っていろんな動植物の飾り物も作りたいです。小さな頃から好きだった昆虫をたくさん作って、銀製の昆虫標本なんか出来たらとても楽しいですね。でもこれは自分だけの宝物になってしまうでしょうね(笑)
何よりも私が作った品物が使う人の手に渡り、その人が家の宝物のひとつとして、代々引継いでいってもらえる事が職人としての一番の喜びです。百年後、私の作った簪が家族の話題になっていたら、私の目標は達成する事になるでしょう。 |